「作家になりたかった」と後悔する人生

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15年前の夢を語る上司

「私も昔、ラノベ作家になりたかったんだよね」

 

これは、とある会社の飲み会で
僕が上司に言われた言葉です。

ラノベ新人賞を受賞した僕が
その受賞作で作家デビューして
すぐのことでした。

 

その上司は会社にとって、
いなくてはならない存在でした。

会社のメインプロダクトの運用を統括していて、
知識豊富で、経験も深く、
困ったら誰もがその人に相談します。

入社して間もない僕にプロダクトのことについて
いろいろ教えてくれたのもその上司です。

「あの人がいなくなったらどうなるんだろう……」
と言われるような存在だったでしょう。

 

そんな人が飲み会の席で、
僕にそう打ち明けたのです。

 

確かにその上司はオタクで、
好きな漫画のイベントがあったら参戦したりしていて、
そういう意味では親近感を持っていました。

 

ですが、
「作家になりたかった」
なんて話は初耳でした。

 

 

僕が

「小説を書いてたんですか?」

と尋ねると、

「学生時代からラノベや漫画、アニメが好きだったから。mixiにその二次創作を書いていた」

という答えが返ってきました。

もしかしたら今もネットの海の
どこかに残ってるかもしれないけど、
今となっては黒歴史だ、と。

 

現代で言うと、pixivやXに
二次創作を書いているようなものでしょう。

 

好きな作品のキャラクターを、
自分の思うままに動かす。

自分の作ったキャラクターではないので
商業作家にはなれませんが、
物語を紡ぐという意味では立派な作家活動です。

 

そこで僕は、質問を続けました。

オリジナル作品は書いたんですか?

「いや~、書けなかった。私には無理だった

どこか寂しそうに、上司はそう答えました。

 

 

実際、ラノベ新人賞に投稿してみようと
思ったこともあったそうです。

だけど、二次創作は出来ても、
キャラクターやストーリーを
0から作るのは無理だった、と。

 

結局その上司は、
オリジナル作品を一作も完成させることなく、
もちろん新人賞にも投稿せず、
普通に就職して今に至っています。

 

そして社会人として成功し、
みんなから頼られる存在になっています。

 

それでもその上司には、
作家という夢を叶えた僕が
眩しく見えたそうです。

 

冗談で「今から目指しましょうよ!」と言ってみると、
上司は「さすがに今からは無理かな~」と笑っていました。

 

その上司は僕のデビュー作も読んでくれて、
面白かったと言ってくれました。

僕はその飲み会で
「いつか大ヒット作家になったら自慢してください」
と言って、
デビュー作にサインを書きました。

 

実のところその飲み会というのは、
会社を辞めて専業作家になる僕の送別会だったのですが、

「応援してる、頑張って」と言って
快く僕を送り出してくれました。

 

 

 

その飲み会での帰り道。

僕は上司との会話を思い出しながら、
「上司の分まで頑張ろう」と
作家としてやっていく決意を強くしました。

だけど同時に、こうも思ったのです。

「少し過去が違ったなら、僕もああなっていたかもしれない」

と。

後悔になるか、思い出になるか

僕も作家を目指し始めた頃、


上司とまったく同じ挫折

をしたんです。

 

僕は「ラノベ作家になりたい!」と思ってすぐ、
オリジナル小説を書き始めました。

どんなストーリーが面白いだろう、
どんなキャラを書いてみたいだろう。

そんな空想を練って、
「こういうのを書くぞ」と決めて、
まっさらなwordファイルに書き始めて……

 

その文章は、2000字くらい書いたところで止まってしまいました。

 

一冊の小説は10万文字と言われていますから、
そのたった1/50です。

 

「いや、全然無理だ」と思いました。

 

生み出された文章は拙く、
このまま闇雲に書いたところで
面白くなるビジョンがまったく見えない。

 

自分は天才ではない。


そう思い知った瞬間です。

 

 

きっと上司も、
この感覚を味わったんだと思います。

もしかしたら、自分の好きな作品と見比べて
あまりのクオリティの差に絶望したのかもしれません。

 

だけどそこから、僕は頭を切り替えました。

「勉強してないんだからできないのは当たり前」
と割り切って、学習を始めたのです。

 

そうして本屋に行き、
創作指南書を読んでみると、
思った以上に物語創作は技術であることがわかります。

「あ、なるほど。一冊の物語はこう作るのか」

本を読むことで、
頭の中に明確な指針が生まれました。

それからきちんとしたプロットを組み、
一冊を書き上げて新人賞に初めて応募するまで、
そう時間はかかりませんでした。

その先にも小さな挫折はいくつもありましたが、
学習と行動により乗り越えてきました。

 

 

上司に話を戻します。

これは実際に話していた僕にしか
わからない感覚だと思うのですが、

上司は、小説家になれなかった過去を
引きずっているように見えました。

 

一回も物語を書き上げたことすらないのに?

 

そうではなく、

 

「一回も書き上げたことがないからこそ」

 

だと僕は思います。

 

 

本気で取り組んでいれば、
たとえ小説家になれなかったとしても、
「なれなかった」と一区切りつけられます。

一冊書いて、新人賞に応募して、落選して、
「ダメだった」と一区切りつきます。

そうすれば、
「作家を目指していた思い出」
として消化できるでしょう。

 

だけどその上司には、
その区切りすらないまま、
自分で自分の道を閉ざしました。

 

その上司はきっと、

「作家になりたいと思いながら、それほど努力していなかった」

ことを理解していたんです。

 

ストーリーやキャラクターを生み出すための
勉強も、工夫もせず、
快適な二次創作だけを続けていました。

 

「どうせ自分には無理だし」
「これでも十分に楽しいし」
と言いながら
心に蓋をしていたのです。

そうした先に何が残るのかというと、
不完全燃焼感、そして後悔です。

 

「あの時挑戦していたら、もしかしたら作家になれたかもしれない」

「もしあの時に本気で努力していたら、今頃は違った人生だったかもしれない」

 

やりきっていないからこそ、
そんな思いを捨てきれないんです。

 

もし僕も、道半ばであっさり諦めていたら。

そんな想いを、後悔を、
ずっと抱えながら生きていたかもしれません。

 

そしてそんな後悔は、
死ぬまで、ふとした時に思い出すほどに、
心の中に残り続けるのでしょう。

今すぐに書く、学ぶ

今、これを読んでいるあなたへ。

 

プロの作家になりたいという気持ちが少しでもあるなら、
今やれることを、まずはやってみてください。

まだ物語を書いたことがないなら、まずは書いてみる。

プロットを書いてみる。
プロローグの最初の一行を書いてみる。
物語の中で一番書きたい、
一番盛り上がるシーンだけ書いてみる。

どこからでもいいです。まずは形にしましょう。

自分に足りないものがすぐに
見えてくるかもしれません。

実はものすごい才能を持っていて、
それが開花するかもしれません。

やってみなければわからないことです。

 

そして、すでに物語を書き始め、
自分に足りないものがあるとわかってなら、
勉強してみる。

足りない能力があると自覚しているなら、
見て見ぬ振りをせず、
今の足りない能力のまま書き続けるのではなく、

 
実力をつけるために学びましょう。

僕もそうしました。

その努力を重ねれば、
確実にプロへと近づいていきます。

 

間違っても、
人生の中で抱え続ける
後悔だけは残さないように。

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