書きたいものを書くか、受けそうなものを書くか。アプローチを変えたことでプロになれた話

どうも、のべろです。

Xの創作界隈などで定期的に話題に上がるのが、
「書きたいもの、好きなものを書くか。それとも受けそうなもの、売れそうなものを書くか」という論争です。

 

小説を書く人の多くはまず、
書きたいものを書くところから始まったのではないかと思います。

自分の趣味として、楽しむために小説を書く。

とりあえずは人の評価なんて気にせず、自分が書きたいものを書く。

もちろん最初はそれが楽しいし、それで満足だったはずです。

 

ですが、
小説投稿サイトに小説を載せたり、
新人賞に応募したりすると、
見える景色が変わってきます。

 

自分が楽しく書いた小説を投稿しても、閲覧数が伸びない。

自分が面白いと思う小説を新人賞に応募しても、落選してしまう。

そして少し目を移せば、
ランキング上位の小説、書籍化された小説、出版された受賞作などが目に入ってきます。

そして往々にして、
それらの作品にはジャンルやキャラ、ストーリーなどに、
共通した要素があるように感じます。

そういう作品を見ながら思うのです。

「自分が面白いと思う小説ではなく、
こういう読者に受けそうな小説を書くべきなのではないか」
と。

 

気持ちはとてもよくわかります。

今では新人賞を受賞してプロとなった僕ですが、
アマチュア時代にはそう考えたこともありますし、
実際に自分の考えを変えることによって受賞に行き着きました。

結論から言うと、
自分が面白いと思うことと読者に受けることは両立する
し、そこを目指すべきです。

「もちろんそれを目指してるけどうまくいかないんだよ」という場合は、アプローチとして
「とにかく好きなものを書いて出す」から「受けているもの(特にラノベ)から好きなものを探す」に変えてみるのがオススメです。

 

どういうことか、僕の経験談も交えながらお話しします。

目次

「好き」「受けそう」をベン図で考える

まずはこちらの図をご覧ください。

書きたいもの、好きなもの

左側の円は、
「書きたいもの、好きなもの」を表しています。

言ってみればこれは、
創作の原動力です。

執筆活動というのは、
数ヶ月も続く長い作業。

好きなもの、書きたいものを書いていないと続かないのは
プロでもアマでも同じことです。

モチベーション高く創作を続けるためにも、
この円からはみ出るようなものを書くのはおすすめしません。

受けそうなもの、売れそうなもの

そして右側の円は、
「受けそうなもの、売れそうなもの」を表しています。

もちろん趣味で書く分には何を書いても自由なのですが、
人に読まれたい、あるいはプロとして本を買ってもらいたいと思うなら、
この視点は避けて通れません。

また、モチベーションという観点から見ても、
結果的に人に読まれたり評価を受けることはやっぱり嬉しいですし、
それ自体がモチベーションアップに大きくつながります。

 

執筆を楽しみ、かつ評価されるためには、
この二つの円が重なったものを書くべきです。

自分が楽しく書けて、かつ受けそうなものですね。

 

とまあ、こう言ってしまうのは簡単なのですが、
じゃあどうやって重なっている部分を見つけるのか。

これについては、
左の円から探すアプローチ、右の円から探すアプローチ、どちらも有効で、
メリットとデメリットがあります。

「好き」から「売れそう」を当てに行くアプローチ

冒頭にも書いた通り、
こちらから入るのが一般的な流れだと思います。

とにかく自分の好きなもの、自分が面白いと思うものを書き、
「これ、面白いだろ?」と言ってみんなに見てもらう。

創作を始めた頃の僕も、完全にこれでした。

メリット

何よりこの手法が良いのは、
好きなものが書けるのでモチベーションに困らないこと。

先ほど上げた図では「書きたいもの」をひとくくりにしていましたが、
その中でも「一番書きたいもの」「好きだが一番ではないもの」などのグラデーションがあるのが普通でしょう。

受けるかどうかなどを考えなければ、
今一番書きたいものを書けます。

そして、既存ジャンルに囚われないものも書けるので、
仮に世間にないような作品を書いた場合、
その面白さが世間に受け入れられたときは先駆者になれる可能性もあります。

この手法で成功している作家もたくさんいます。

 

受けるかどうかを一切考えない、というのは極端だとしても、
自分が書きたいものの中から「これはきっとみんな面白いと思ってくれるはず」と思うものを選べば、
「書きたい」と「受けそう」が両立できるように見えますね。

デメリット

ただ、この手法には強烈なデメリットがあります。

僕はこのデメリットが自分にとって大きいと気づき、
アプローチを変えました。

それは単に、
受けない確率が上がる、というだけではありません。

何よりのデメリットは、
「自分が好きな要素を入れることで、それだけで大きく加点してしまい、面白さが客観的に判定できなくなってしまう」
ことだと考えています。

具体例&のべろの経験談

どういうことか、わかりやすい例を出しましょう。

 

例えば僕が、熱狂的な野球好きだったとします。

野球を観るのが好き。草野球としてプレイするのも好き。

野球の面白さを表現することにかけては誰にも負けない自信があります。

しかし、野球漫画はたくさんあるのに、野球ラノベは全然ない……。

チャンスに見えますね。

「これは僕にしか書けない作品だ!」と意気込み、
野球ラノベを書き始めます。

 

さて、この時に注意しないといけないのは、
僕にとっては、野球をしているシーンすべてが面白く感じるということです。

もっと言えば、内容がマニアックなほど面白く感じます。

投手・捕手と打者の心理的な駆け引きをつぶさに描写したり、
現実ではほぼ起こらないようなルールの穴をついたトリックプレーを見せたり、
野球が好きだからこそ、そういうシーンを面白く感じます。

野球が好きだからこそ、
「野球を小説で読めるだけで面白い」と考え、
すべての試合シーンを加点だと捉えてしまうのです。

 

しかしこれは、読者にとっての加点にはなりません。

 

ほとんどの読者はそれほど野球を知らないので、
話について行けず興味が削がれてしまい、
作者が面白いと思っているシーンがむしろ減点にすらなります。

もちろんキャラの関係性でドラマを作るなど、
野球シーンを面白く読ませる技術はたくさんあるのですが、
好きなものを題材にすると、
そういう客観的な視点が往々にして抜け落ちてしまいます。

野球という題材選びがダメなのではありません。

本来なら野球を知らない人にも楽しんでもらえるように作らないといけないのに、
「面白く作れていない」ということに気づけなくなってしまうのです。

初心者に近いほど、
この視点を持つのは難しいです。

 

これは極端な例なので
「そんなことしないよ」と思われたかもしれません。

「自分しか好きじゃないようなマニアックな題材を選んでるわけでもないし」と。

ですが、同じようなことは題材選び以外にも起こりえます。

  • ヒロインが特定の要素を持っているだけで「十分可愛い」と思ってしまい、もっと可愛くすべきところを手抜いてしまう。
  • 自らが思う劇的なストーリー展開にこだわりすぎて、「多少他の部分が犠牲になってもこれを実現できればOK」と思っていたが、読者視点だと総合的に見てマイナスの方が大きい。
  • 世界観のアイデアを読者に伝えることで満足してしまっていたが、それだけでは足りない。

僕自身もかつて、
こういう作りをやってしまってしまい、
「面白くない」という評価を受けたことがあります。

たちの悪いことに、この手の作品は、
オリジナリティはあるので
新人賞では一次選考や二次選考は意外と通過しやすかったりします。

そして高次選考になって、
「楽しめる読者の間口が狭い」
「面白いポイントがニッチすぎる」
という評価を受けて落選するという……。

(のべろの経験談です)

まとめると、
好きすぎるジャンルや題材、要素を選んでしまうと、
読者の視点が欠けやすくなります。

これ、「自分はできてる」と思っていてもできていないことが多いです。

僕もそうでしたし……。

それくらい、小説を客観視するのは難しいことです。

 

なので、このやり方が上手く行く人ももちろんいますが、
「好きなものを書く」へのこだわりを捨てることで先に進める人もたくさんいると僕は思っています。

「受けそう」から「好き」を探すアプローチ

上のやり方で上手くいかなかった方におすすめなのが、
先ほどの図で言うところの、
右側からいくアプローチです。

すなわち、いったん自分の好みは横に置いておいて、
まずヒット作や受賞作を分析し、
受けそうな題材やストーリーなどを並べて、
その中から「これなら自分も楽しく書けそう」と思えるものを探すのです。

メリット

このアプローチの何よりのメリットは、
自分の作品に対して冷静な目を持つことができることです。

 

先に「これが好き」から入ってしまうと冷静な目を持ちにくい、
というのは上に述べた通りです。

ですが、先に「どんなものが受けているのか」という冷静な視点から見ることで、
「自分の作品は面白くなるか」という観点を忘れずにすみます。

そして、こうした視点を持つことで、
その作品に限らず、
「ラノベ読者がどんな要素を好むのか」という感覚が少しずつ磨かれていきます。

 

もちろん、「書いた作品が全然受けない」という事態に陥る確率も
先ほどの手法よりはるかに低いでしょう。

デメリット

デメリットがあるとすれば、
一番書きたいものを書けないことが多いことや、
モチベーションの問題です。

また、最初からこの方法をとってしまうと、
もしかしたら大ヒットしたかもしれない可能性を潰してしまう可能性もあります。

なので、最初は先の方法から始めて、
「このままじゃダメかも」と思ったり「プロになりたい」と
覚悟を決めたところで切り替える
のがオススメです。

のべろがうまくいったのは、この方法に切り替えてから

ここからは経験談です。

上述の通り、創作初期は好きなものを好きなように書いていた僕ですが、
「このままじゃダメだ」と思うようになりました。

というのも、
もともと独学だけで書いていたものを他の人に読んでもらったところ、
さまざまな要素で「こういうのはラノベ的にNG」のようなコメントをもらうことがあったからです。

そこでとったのが、
「ヒット作の中から面白い、書いてみたいと感じるものを見つけ、
その面白さのエッセンスを取り入れて作品を書く」

というアプローチです。

これが僕にとっては抜群に効きました。

 

当時の僕はまだ、ライトノベルへの理解が足りていませんでした。

つまり、「どんなものが面白いと思われているか」もしっかりわかっていませんでした。

そこで、ヒット作や受賞作の中から「これは面白そう」と思ったものを読んでいき、
その作品が受けた理由を分析するようになったのです。

そしてその面白さの核となるようなをそのまま、
自分の作品の中にも活用していきました。

本質を変えずにガワだけを変える、
「換骨奪胎」と呼ばれるような方法ですね。

 

こう書くと「ヒット作の真似をするような執筆なんてつまんないんじゃないの」と思われそうですが、
まったくの杞憂でした。

そもそもヒット作というのはたいてい自分が書く作品より面白いですし(悔しいですが)、
それを真似すると自分の作品もちゃんと面白くなるんです。

僕の場合、
書きたいものを自由に書いていた時期よりも、
はるかに面白いものが書けるようになりました。

そう実感できるって、けっこうすごいことだと思いませんか。

それから新人賞を受賞するまで、
そう時間はかかりませんでした。

自分の作品作りのアプローチを見つめ直す

ここまで「好きなものを書くか、受けそうなものを書くか」というテーマで書いてきました。

まとめると、楽しく創作を続け、それでプロになりたいと思うなら、
「楽しく書けてかつ受けそう」なものを探し当てるべきです。

その中でも「書きたい」と「受けそう」、どちらから探すアプローチもあり、
もちろん合う合わないもあるのでその人にとって最適なものを……
などと書いても面白くないので、
僕は前者から始め、後者に移っていくことをオススメしています。

 

あくまで僕の肌感覚でですが、
前者でうまくいくのは少数で、
今プロとして活動している人の多くが後者のアプローチを経験しています。

「どちらかしかやったことがない」
という方は特に、色々と試してみてください。

見える景色が変わるかもしれません。

noteにて、ライトノベルの技術を体系化しています

今でこそ複数の新人賞を受賞しプロになった僕ですが、
初めからうまくいったわけではありません。

一次落ちや二次落ちだって何度もしていますし、
はじめの頃はライトノベルというものをまったくわかっておらず、
受賞までに長い時間がかかってしまいました。

ラノベをたくさん読んでいたのに、
創作指南書などで熱心に勉強していたのに、
なかなか実力が身につかなかったのです。

ですが、今ならその理由が分かります。

それは、ライトノベルに特化した技術を学べる場がなかったから。

ライトノベル作家の視点や感覚を気軽に知ることができなかったから。

 

そしてその状況は、今もあまり変わっていないと考えています。

だから僕が、ライトノベル技術の体系化を始めました。

↓こちらのリンクから飛べます。

ブログでもnoteでも、僕の活動理念は同じです。

「アマチュア時代の僕が知りたかったことを伝える」こと。

あの頃の僕が読めば一段階レベルアップできたはず、
遠回りすることなく最短ルートでプロになれたはず、
心からそう思えるような記事を投稿していっています。

きっとあなたにも役立つはずなので、
ぜひ一度覗いてみてください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

それではまた。

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